2026.11.05
EXHIBITION 20 “eternity”
Morison Kobayashi
Daisuke Nakamuraand wander journal #99
丸の内のand wander OUTDOOR GALLERYでは、彫刻家のモリソン小林さんと中村大介さんの2人展「eternity」を開催します。
鉄を題材にリアルな山の植物を造形するモリソンさん。木片を彫刻し、架空の生き物を生み出す中村さん。2024年11月に続き、二度目の展覧会を開催するにあたり、今回は登山好きであるおふたりにそれぞれの山の楽しみ方をうかがいました。
モリソン小林さんへのインタビューはこちらから 2024.10.27
中村大介さんへのインタビューはこちらから 2024.11.01
モリソン小林・中村大介
「eternity」
2026年11月14日(土)〜22日(日)
11:00–20:00 ※最終日は17:00まで
東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル1F and wander MARUNOUCHI
tel.03-6810-0078
金属で植物をつくるモリソン小林さん。鉄板をパーツごとに切り出して成形し、時間をかけて錆びさせ、着色する工程を繰り返す。葉の裏側から根にいたるまで丹念に形づくられたその姿は、本物の植物と見紛うほど。
INTERVIEW
――モリソンさんと中村さんは、それぞれ異なる作品を制作されていますが、ともに山に登り、そこでの時間が創作にもつながっているそうですね。おふたりで登山に出かけることも多いと伺いましたが、そもそも山に登り始めたのはいつ頃からですか?
モリソン小林(以下、モリソン):2012年くらいからですかね。もともとは身近な植物を作品にしていたんですけど、高山植物もいいんじゃないかと思うようになって、実際に山へ見に行くようになったんです。だから、もともと山が好きだったというより、作品づくりがきっかけで、自然と登山を始めたという感じですね。
中村大介(以下、中村):僕も20代の頃は、そんなに自然の中に入っていくことはなかったですね。でも、その頃に屋久島へ行く機会があったりして、少しずつ山に登るようになりました。
――登山には、山頂を目指してひたすら歩く人もいれば、のんびり自然を楽しむ人もいるなど、さまざまな楽しみ方がありますよね。おふたりの場合は、自然観察が主な目的なのでしょうか。
モリソン:大ちゃんは、けっこうピークハンターだよね。
中村:いや、そんなことないですよ(笑)。
モリソン:一緒に歩いていても、途中で「僕はここでいいよ」って言うと、大ちゃんだけ頂上まで行ってくることがあるんです。
中村:そうですね。待たせるのも悪いから、走って行ったりします。
――その間、モリソンさんは何をしているんですか?
モリソン:植物を見たり、写真を撮ったり。いくらでも見たいものがありますからね。
中村:僕の場合、見たいものが木だったり鳥や動物だったりするので、森林限界を越えると、そういうものがなくなってしまうんです。だから、絶対に山頂まで行かないと気が済まないわけでもないんですけど、せっかくだから行ってみようか、という感じですね。
モリソン:大ちゃんは、めちゃくちゃ歩くのが速いんですよ。全盛期は、たぶんコースタイムの半分以下で歩いていましたから。
流木や倒木を材料に、そのかたち・表情をいかしながら山にいるような架空の生物を彫りだす中村大介さん。
――これまでおふたりで訪れた山のなかで、特に印象に残っているのはどこですか?
モリソン: 那須岳ですかね。いろいろな景色が楽しめるのがいいんです。岩場もあれば、湿地帯やなだらかな山もあって、ひとつの山域でも表情が違うんですよ。磐梯山もよかったよね。植物もたくさんあって。
中村: 磐梯山と吾妻連峰も印象に残っていますね。あのときは、車中泊をしながらふたつの山をはしごしたんです。まず磐梯山に登って、吾妻連峰の麓まで移動して車中泊。翌朝、吾妻連峰に登りました。磐梯山は、トンボがすごく多かったなあ。最近は、ふたりともspecial sourceの制作が忙しくて、なかなか泊まりがけで山に行けなくなってきたんです。だから、あえて納品の時間を夕方にして、それまでの時間に飯能周辺や埼玉の低山に登ったりしています。
八ヶ岳、尾瀬ヶ原、奥穂高岳など
――改めて、実際に山を歩いているとき、おふたりはどんなものに目を向けているんですか?
中村: 僕は鳥や動物、昆虫なんかをよく見ていますね。そういう生き物が持つ独特の表情というか、気配や雰囲気みたいなものを、自分の作品にも生かせたらと思っているので。鳥を見つけると、カメラの望遠レンズを双眼鏡代わりにして、飛び立つ瞬間を眺めたりもします。あとは、やっぱり木ですね。特に倒木が気になります。大きな木が倒れている、その倒れ方というか、佇まい。倒れた木から新しい芽が生えていたり、そういうところをよく見ています。
「風雨にさらされた倒木や流木のなかに、人のような、動物のような、精霊のような、畏怖の存在を感じます」(中村さん)
モリソン: 僕は下ばかり見ていますね。だから危ないんですよ(笑)。以前、低山で植物を見ながら歩いていたら、登山道から外れてしまったことがあって。道迷いって、こうして簡単に起こるんだなと思いました。植物を観察するときは、全体の姿はもちろん、葉の裏や花の裏、土から生えている根元のあたりまでよく見ます。図鑑に載っている植物の姿と、実際に山で見る姿は、必ずしも同じではないんです。特に昔の図鑑には、実物と違うところもあったりして。
例えば、図鑑には花びらが5枚と書いてあっても、実際には6枚や7枚、8枚のものだってあるんです。色も白だけじゃなくて、黄色や緑、少し紫がかっているものがあったり。本当にいろいろなんですよ。だから、やっぱり自分の目で確かめることが大切なんですよね。
モリソンさんが心惹かれる高山植物。作品のモチーフにする植物については、名前はもちろん、造形や特徴まで熟知していますが、作品にしない植物については「まったくわからない(笑)」
――今回の展覧会タイトルは「eternity」ですが、どのような思いを込めたのでしょうか。
中村: 「悠久」という意味を込めています。僕たちの作品のモチーフになっている植物や動物などの自然は、人間が生まれるずっと以前から、果てしなく長い時間のなかで命をつないできたものです。そうした時間の流れを思って、このタイトルにしました。
モリソン: 日本の山には、氷河期から生き残ってきた植物や希少な植物がたくさん残っています。山の環境だからこそ守られてきた植物もあるんです。日本の山の植生は世界的に見ても独特で、本当にすごいことだと思っています。だから、僕にとって山と植物は切り離せないものなんです。植物を知るには山を知らないといけないし、山を讃えるというか、そういう気持ちで植物を見に行っているんですよね。
2年ぶりとなる今回の展覧会「eternity」では、モリソンさんが金属でつくる植物と、中村さんが木から生み出す不思議な生き物たちが、再び同じ空間に並びます。
時間と自然が生み出す多様なかたちと、それを独自のまなざしで捉えたふたりの作品を、ぜひand wander OUTDOOR GALLERYでご覧ください。
PROFILE
モリソン小林
神奈川県相模原市出身。多摩美術大学卒業。2001年special source設立。space product、steel workを中心に活動しながら高山植物や絶滅危惧種を巡り、鉄を主体とした金属で全身標本などを制作。第24回岡本太郎現代芸術賞岡本敏子賞受賞
https://specialsource.jp/
中村大介
茨城県出身。ICSカレッジオブアーツ卒業後、モリソン小林と共にspecial sourceとして活動。山に入り動物や草花、倒木などからインスピレーションを受け山びこ(山の神様)を制作している。
https://specialsource.jp/
edit・text Tomoko Yanagisawa
photography Morison Kobasyahsi, Daisuke Nakamura