2023.1.23

EXHIBITION 11
Trail Dogs and wander journal #57

「Trail dogs」は “犬と一緒に、より自由に自然を楽しみたい” という思いから生まれた企画展です。よきパートナーとして生活をともにしている人も、これからそうしようと考えている人も、みんなで考えたい「犬との暮らし」。3階は、愛くるしい犬たちを描くイラストレーターのオカタオカさんによる作品展示、4階では、アウトドアプロダクトを手掛けるさまざまな愛犬家たちによる新作を紹介します。

and wander OUTDOOR GALLERY with PAPERSKY
2023年1月13日(金)〜3月5日(日)
12:00 – 19:00(最終日は17:00までとなります) 水曜・木曜定休
※2月3日(金)〜10日(金)は臨時休業となります
東京都渋谷区元代々木町22-8 3F, 4F
tel. 03-6407-8179

犬を飼うということと、それを取り巻く複雑な環境と。

ステイホームを豊かにする愛おしき存在として再認識されるよりずっと以前、太古の昔から、犬は人間のよき友であり続けてきました。もちろん、すべての人にとってそうだというわけではなく、個人の嗜好は尊重されるべきでしょう。けれど実際、縄文時代の遺跡からは丁寧に埋葬された犬の骨が発見されているし、人と犬が見つめ合うことでオキシトシン、いわゆる愛情ホルモンの分泌が増える(人間だけではなく、犬のほうにも!)という研究結果もあります。つまり歴史的にも、科学的にも、そしてもちろん犬好きにとってはまずもって直感的に、人間と犬が共生関係にあるということは紛れもない事実なのです。

オカタオカさんの作品展示と、5人の愛犬家によるドッググッズ受注販売。

今回の展覧会はフロアごと、二部仕立ての構成になっています。3階では、イラストレーターのオカタオカさんの作品とグッズを展示。動物のなかでも、とりわけ犬は、オカさんが好んで取り上げるモチーフ。自身も保護犬の里親としての経験をもつオカさんは「犬と一緒にいることで、自分もやさしくなれる。犬のおかげで自分の人生が豊かになったと実感しています」と話します。

Photo: Kosuke Hamadaアトリエのデスクに座る、イラストレーターのオカタオカさん。大好きだという犬と車は、オカさんの描く作品にもよく登場します。

Photo: Kosuke Hamadaオカさんの鹿児島のアトリエ。室内にはグリーンがあふれ、作業机は光のたっぷり入る窓に向けて置かれ、気持ちよく制作できそう。

そんなオカさんが今回のために描き下ろした作品には、ヒゲにキャップの男性(オカさん似!)とバイカラーの犬のコンビが、山や川といったフィールドでトレッキングやカヌー、ドライブを一緒に楽しんでいる様子が。彼らは展覧会のメインビジュアルとして、DMやステッカーにも登場しています。

会場に入ってすぐに展示されているのは、犬と一緒にアクティビティを楽しむペインティング作品。

展示のために描き下ろしたメインビジュアルとなった作品がこちら。

ギャラリーの3階では、描きおろしのペインティングや、地元鹿児島のアーティストたちと共作したグッズなど、イラストレーター・オカタオカさんのクリエイションが存分に堪能できる。

このほど故郷の鹿児島に拠点を移し、ローカルなコミュニティから生まれたグッズの展開もスタートしたオカさん。「鹿児島には、クラフト界の“アベンジャーズ”みたいな人たちがたくさんいるんです」と胸を張ります。会場には、「気負わずいろいろなことに挑戦できる環境」にあるという新天地で誕生した最新作が並びます。ともに車好きで意気投合したというデザインオフィス「Judd.」主宰の清水隆司さんとつくったブランド「HIGHWAY」のカーアイテムも。

「灰車(ASH CAR)」¥9,680、「CAR FLOWER VASE(一輪挿し)」¥7,800

「CHOCK END(ブックエンド)」¥19,600、「DRIVING MIST(ミストスプレー)」¥4,200 も「HIGHWAY」のアイテム。

4階では、5人の愛犬家たちによるドッググッズを紹介します。「Jindaiji Mountain Works」の尾崎光輝さん、「2-tacs」の本間良二さん、「Tacoma Fuji Records」の渡辺友郎さん、「Gris by muraco」の村上卓也さん。そして、ハンドメイドのドッグタグメーカー「Sloppy」とコラボレートしたのは、「and wander」の森美穂子。

4階では、アウトドアプロダクトを手掛ける愛犬家たちによるさまざまなオリジナルアイテムと「ヒュッテ入笠(旧マナスル山荘本館)」での読み物を展示。

彼らが犬との暮らしをそれぞれどう考えているか、どう楽しんでいるか。ひとりひとりの言葉とともに、バッグ、ウェア、リーシュなどのオリジナルプロダクトをとおして感じていただきたい展示です。

「Jindaiji Mountain Works」から、プライベートで使用するために制作している散歩バッグ「Walking The Dog Bag」¥9,900と、犬と一緒に山を歩くための 2.5mロングリード「Sky Dog Trail Leash」¥4,180

2アクションで着脱しやすい「2-tacs」のドッグコート。生地は「BROWN by 2-tacs」と同じものを使用。¥11,000〜16,500

犬好きをてらいなく表現したモチーフを全面に配した「HOT DOG RAGLAN SLEEVE SWEATSHIRT」¥19,800

「Gris by muraco」より、愛犬の名前が刻印できる「DW BOWL」¥4,400〜6,600

「Sloppy」とコラボレートした「ドッグチョーカー」¥4,950〜6,050

“犬と一緒に、より自由に自然を楽しみたい”と思うのは、犬と生活をともにしている者にとって、とてもプリミティブでナチュラルな、共通の願いです。けれども、では、どうやって? ひとたび具体的な話となると、その考え方、やり方は、人と犬との関係性の数だけ存在します。

というのも、じつは今回の「Trail Dogs」の企画が立ち上がった当初、私たちはストレートに、犬とアウトドアに出かける楽しみを紹介する内容を考えていたのです。でも、事はそんなに単純ではありませんでした。公共の場に犬を連れていくこと、自然環境に犬を立ち入らせることには、さまざまな意見があります。当然です。犬を飼うということには、賛成の立場もあれば反対の立場もあって、コミュニティの一員としての権利と義務があって、それぞれにとっての正義や道徳観もある。社会生活のなかで犬を飼うということについて語ろうとするとき、ルールのないグレーゾーンに、私たちはどうしても踏み込まざるを得ないのです。

犬との暮らしは、なにしろすばらしい。

なんにつけ、いろんな価値観とのすり合わせが必要になります。全員が納得する解決方法はなかなか見つからないでしょう。そんなとき、問答無用にルール化してしまえばある意味、楽に違いありません。でも、本当にそれでいいのでしょうか。違う考えをもつ者同士、声高にただ主張するのではなくて、お互いに歩み寄り、譲り合い、尊重し合いながら、それぞれがそれぞれの責任感でもって自由を謳歌する方法はないのでしょうか。そして、それを探す過程にこそ、意味があるのかもしれないと思うのです。

飼い主としての責任と、相棒としての務めと。掛け値なしにいつも私たちに寄り添ってくれる犬たちとのかけがえのない生活を維持するために、何が必要かを、ここから考えていきたいと思います。

4階では、企画展の参加者たちが推薦する犬関連の本も、手に取って見ることができる。

犬好きも、そうでない人も。「ヒュッテ入笠」で考える。

そして、素敵なドッググッズを手に入れたら当然、愛犬と一緒に出かけたくなるのが人情です。けれど近年、残念なことに、公共の場が犬連れ禁止となる事例が増えています。従来は各自のマナー感覚や良心に任されていたはずのグレーゾーンだったところに、対立や断絶が色濃く立ち上がってしまうのは、どんな立場に身をおくにせよ、愉快なことではないでしょう。

そんななか、一貫してドッグフレンドリーの山小屋が長野県にあります。「ヒュッテ入笠(旧マナスル山荘本館)」は、犬連れ専用の施設ではなく、犬を連れてきても構わないというスタンス。拒否することもなく、反対に特別扱いすることもなく、犬に対してあくまでもフラットなその姿勢は、じつはとても貴重です。どんな思いで犬の受け入れを続けているのか、オーナーの山口信吉さんに取材した読み物も、入笠山から望む気持ちのいい山並みの写真とともに掲出します。

愛犬と一緒に自然を楽しむために、私たちはどんな態度で、どんな選択をすればいいのか。山口さんのお話はきっと、それを考える一助になるはず。“犬と一緒に、より自由に自然を楽しみたい”。そのための正解は、ひとつではないのですから。

Photo: Jiro Fujita(photopicnic)入笠山中腹にある「ヒュッテ入笠(旧マナスル山荘本館)」は、ドッグフレンドリーの山小屋。犬連れの人もそうでない人も居心地よく過ごすには、どんなことに気をつけたらいんだろう? オーナーにお話を伺った。ヒュッテには、広々と気持ちいいドッグランも併設されている。

気持ちのいい「ヒュッテ入笠」の写真と、オーナーの山口さんがどんな思いで犬の受け入れを続けているかを取材した読み物を展示。

PROFILE

オカタオカ

宮崎と鹿児島の県境で育つ。桑沢デザイン研究所卒業。書籍、アパレル、広告などにイラストレーションを提供。ペインティングのみならず、セラミックやウッドカットなどさまざまな手法で作品を発表している。YACHIYO KATSUYAMAとのユニット〈石に花〉としても活動。犬と車が好き。

東京・高尾を拠点に、シンプルで軽量なバックパッキングギアを製作するクラフトギアメーカー。タープやハンモック、ウェアやクッカーなどのほか、オランダ生まれの希少な犬種、コーイケルホンディエの愛犬ミンガスとのフィールドワークで生まれた機能性にすぐれたドッググッズも展開。

1998年、ビンテージ服に加工を施した「2-tacs」を始動。2009年、自身の小説『ブラウン伯爵』と連動させたアパレルブランド「BROWN by 2-tacs」を立ち上げる。現在は東京と丹沢で二拠点生活。菜園、ガーデニング、木彫、執筆などの活動を行いながら愛犬と暮らす。

2008年、「実在しない音楽のマーチャンダイズ」をプロダクト化することを目的としてレーベルをスタート。ミュージシャンや芸術家、アパレルブランドとのコラボレーションなども含め、ファッション、カルチャーと「普通の生活」の隙間をボーダーレスに活動中。

アウトドアブランド「muraco」をベースに、2022年9月に誕生したドッグアクセサリーのラインには、愛犬の名を冠した。muracoで培った適切な素材選定、細部にまでこだわった使い心地を追求し、犬と人とのライフスタイルに自然に寄り添うプロダクトを展開する。

「山や自然の中でも街と同じようにファッションを楽しみたい」という想いで2011年にブランドを設立。感性を刺激するモード感とアウトドアウェアとしての実践的な機能性を追求したものづくりを展開。今回の展示のために、ハンドメイドのドッグタグメーカー「Sloppy」と共同でチョーカーを製作した。

*価格はすべて税込です。

edit PAPERSKY
text Mick Nomura / photopicnic
photography Kosuke Hamada(okataoka), Jiro Fujita/ photopicnic(Hutte New Casa), Machiko Fukuda (exhibition)