2021.12.20

EXHIBITION 07 / 3F
Wondrous Winter Market
inspired by Kenji Miyazawaand wander journal #37

『PAPERSKY』最新号のテーマは宮沢賢治。賢治の物語を脳内にインプットし、身体を開いてイーハトーブを巡る旅を紹介します。 ウィンターマーケットに集まるのは、この賢治を巡る岩手の旅から、『PAPERSKY』チームが持ち帰ったさまざまなインスピレーション。 旅に参加したアーティストの作品をはじめ、盛岡の人気書店「BOOKNERD」も出張オープンします。多様な視点で、宮沢賢治に出会い直してみてください。

2021年12月17日(金)〜2022年1月30日(日)
12:00 – 19:00 (最終日は17:00までとなります) 木曜定休
東京都渋谷区元代々木町22-8 3F, 4F and wander OUTDOOR GALLERY with PAPERSKY
tel. 03-6407-8179

会場エントランスを飾る、写真家の砺波周平さんとイラストレーターの塩川いづみさんのコラボレーション作品。

アーティストが感じたイーハトーブの空気。

『PAPERSKY』最新号で旅した、賢治のフィールド・岩手。その旅のゲストのひとりが、イラストレーターの塩川いづみさん。塩川さんは、賢治が生前唯一出版した詩集『春と修羅』にドローイングを描き下ろした詩画集を制作するなど、以前から賢治ワールドに親しんできたアーティストです。

もうひとりは、写真家の砺波周平さん。塩川さんと共に岩手を旅する中で、賢治の気配を感じるさまざまな風景を写真に収めてくれました。

旅は、賢治の生誕地である花巻からスタート。物語にも登場した高山植物の宝庫、早池峰山や遠野、盛岡を辿り、最後は『銀河鉄道の夜』の世界を目指して三陸海岸まで足を運びました。

会場で展示されるのは、二人が岩手の旅を経て制作したコラボレーション作品。岩手各地で撮影された砺波さんの写真に、塩川さんがドローイングを描き、賢治が見た空想の世界を表現しました。みずみずしい写真と、伸びやかな線。2人のアーティストが岩手から受け取ったものが重なり、イーハトーブの清らかな空気を届けます。

イラストレーターの塩川いづみさんと写真家の砺波周平さんのコラボレーション作品。小岩井農場の夜空に、銀河鉄道が走る。

遠くに見えるのは、賢治が足繁く通った早池峰山。塩川さんが描いたのはこの山で出会った高山植物のハヤチネウスユキソウ。

賢治作品を描き続ける小林敏也さんのイラスト

小林さんがライフワークとして手がけ続けている賢治の“画本”。

画家・小林敏也さんの作品。手のひらサイズの小作で、販売もしている。

もうひとつ、会場の見どころとなるのが画家・小林敏也さんの作品です。1979年に『画本 宮澤賢治 どんぐりと山猫』を手がけたことをきっかけに、ライフワークとして賢治の世界を“画本(えほん)”にして伝えてきた小林さん。

スクラッチという独特の技法で描かれる作品が、賢治のイマジネーションを豊かに掬い取ります。画本シリーズの魅力のひとつが造本。作品によって紙を変え、特色刷りもしているそう。装丁から紙選びまですべてを小林さんが手がけ、大人も夢中になれる一冊に仕上がっています。会場には小林さんの貴重な原画や、画本シリーズも展示・販売されます。

賢治の言葉と小林さんの絵が合わさったモノクロームの作品。

盛岡の人気書店がセレクトする賢治の関連本

さらに楽しみなのが、盛岡の人気書店「BOOKNERD」の出張書店。店主の早坂大輔さんが選んだ、岩手や賢治の関連本をはじめ、BOOKNERDらしい選書やグッズなどが並びます。

写真、絵、本、雑貨。さまざまな角度から新しい宮沢賢治の世界に出会えるウィンターマーケット。そこから受ける刺激で、宮沢賢治の印象はより豊かに広がっていくはずです。

作家であり、思想家。科学や農業に精通し、レコードコレクターであり、菜食主義者でもあった賢治。地球上のあらゆる命に敬意を払い、平等性を説いた姿は、まさに今、社会が目指している理想の世界かもしれません。賢治と彼を育んだイーハトーブの風を、ぜひ東京で感じてみてください。

書店BOOKNERDの選書。賢治と岩手を軸に、新刊から古書まで、さまざまな名著が並ぶ。

宮澤賢治を特集したペーパースカイの最新号も会場で手に入る。

PROFILE

塩川いづみ (しおかわいづみ)
イラストレーター。広告、雑誌、プロダクトなど幅広いジャンルでイラストレーションを手がける。2019年には宮沢賢治の詩にドローイングを描き下ろした詩画集『春と修羅』を出版。

砺波周平 (となみしゅうへい)
写真家。北里大学獣医畜産学部在学中に、写真家の細川剛氏に師事。その後、写真家として活動を始める。2020年には自身の妻や子どもたちを被写体とした写真集『続 日々の隙間』を出版。

小林敏也 (こばやしとしや)
デザイナー・イラストレーター。東京・青梅に「山猫あとりゑ」を構え、現在は主に本の装丁・挿絵の仕事を手掛ける。ライフワークとして手がけている『画本 宮澤賢治』シリーズは15冊以上。2003年に岩手県花巻市が主催する宮沢賢治賞を受賞。

BOOKNERD (ブックナード)
岩手・盛岡に2015年にオープン。新刊から古書まで、店主・早坂大輔さんの視点で選ばれた良書が揃う。早坂さんの著書『ぼくにはこれしかなかった』(木楽舎)には店の成り立ちも綴られている。

edit PAPERSKY
text Yuka Uchida
photography Machiko Fukuda