2021.12.20

EXHIBITION 07 / 4F
Kenji’s Cosmic Minerals exhibitionand wander journal #38

Patrick Reith (@mineralien_surselva)

『PAPERSKY』最新号のテーマは宮沢賢治。賢治の物語を脳内にインプットし、身体を開いてイーハトーブを巡る旅を紹介します。ギャラリー3階のウィンターマーケットと同時期に開催するのが、賢治を魅了した鉱物の展覧会。ファインミネラルを探して世界中を旅する〈USK MINERALS〉の貴重なコレクションを公開・販売します。

2021年12月17日(金)〜2022年1月30日(日)
12:00 – 19:00 (最終日は17:00までとなります) 木曜定休
東京都渋谷区元代々木町22-8 3F, 4F and wander OUTDOOR GALLERY with PAPERSKY
tel. 03-6407-8179

会場はギャラリー4階。大きなテーブルの上に、インスタレーションのように鉱物が点在する。

Interview

賢治の物語に散りばめられた、さまざまな鉱物。

幼い頃から、河原でよく石を拾っていたという宮沢賢治。そこからついたあだ名は“石っこ賢さん”。賢治の石好きが伝わるエピソードです。

物語にもさまざまな石が登場します。短編『十力の金剛石』には、「うつくしい紫水晶」という表現でアメシストが、代表作『銀河鉄道の夜』にはルビーが、『春と修羅』に収められた詩にはエメラルドが登場し、賢治の世界をより豊かにしています。

こうした賢治と石の関係に着目しつつ、鉱物の魅力を伝えてくれるのは〈USK MINERALS〉の内田佑介さん。世界のミネラルショーから海外の採掘場まで、自身の目で探し出した鉱物を日本で紹介する内田さん。深く魅了されている鉱物の世界について、話を聞きました。

左からアメシスト、エメラルド、ルビー。いずれも賢治の作品に登場する鉱物。

――石のバイヤーになったきっかけを教えてください。

この仕事を始めたのは10年程前です。 前職はフリーランスのレコードバイヤーをしていました。 2010年に勤めていたレコード店を辞めて独立。 ジャマイカやアメリカにレコード買い付けの旅に出たのですが、旅先で大きなトラブルに巻き込まれてしまったんです。 自信を喪失していた時に、アメリカ・アリゾナ州セドナの石屋で出会ったのが水晶。そこで運命が変わりました。

―――鉱物の世界への扉が開いたんですね。

そうなんです。その小さな石の中に、今まで見てきた様々な景色が広がっていた。 鉱物から地球を感じ、その衝撃に突き動かされて、石のバイヤーになることを決意しました。

宇宙に散らばる星のように輝くさまざまな鉱物。

賢治と鉱物の関係を紐解く関連書も手に取れる。

――そもそも鉱物とは何なのでしょうか? 宝石や岩石との違いを教えてください。

岩石は、身の回りにある石や大きな石のことです。マグマが固まったり、砂や泥が固まったりしてできています。その岩石をつくっているのが鉱物です。学術的な表現をすると「特定の化学組織を持った結晶」のこと。すべての物質の構成単位である原子が、おもちゃのブロックみたいに規則正しく並んでいる状態です。対して、岩石はさまざまな鉱物の集合体。いろいろな鉱物が不規則に少しずつ混ざっています。

そして宝石も鉱物の一種です。鉱物の中でも装飾に向く特性を持っているもの、希少で色が美しく、加工できる硬質なものが、宝石という名で呼ばれます。

間近で見たアズライト。コバルトブルーとエメラルドグリーンが混ざり合う様は、宇宙から見た地球のよう。

淡い紫に輝くアメジスト。賢治が愛した鉱物のひとつ。

――海外の採掘場にも足を運ばれるそうですね。

買い付けで海外を旅する時は、旅先の採掘者にコンタクトして現場を見させてもらっています。印象的だったのは南アフリカのナミビア。この国は世界有数の鉱床で、鉱物ファンにとっては憧れの地です。特に“炎の山”と呼ばれるブランドバーグで採掘されるアメシストは世界で一番美しいとされています。透明度の高い水晶の中に、マゼンタやブルーパープル、ブラウンのファントムが幻想的に煌めく様子は、今も忘れることができません。

アルプスの水晶の採掘場にも足を運びました。アルプス山脈では何世紀も前から水晶が採掘されていて、そのほとんどはイタリアに運ばれ、シャンデリアとして磨かれたり、カップなどに加工されたりしていました。その美しさから、アルプスの水晶は今もコレクターからの評価が高く、一度この目で採掘場を見たいと思っていたんです。

アルプスの山々は一年のうち8〜9ヶ月も雪に覆われています。雪が溶けたほんのわずかな時期を狙って採掘を行うのですが、この期間にタイミングよく訪れることができました。危険と隣り合わせで採掘を続けるプロの仕事に触れられたことにも勉強になりました。

(左)採掘者は危険な絶壁を何時間も登らないといけない。 (右)採掘数が極端に少ないことから、アルプスの水晶はとてもレア。

――ミネラルショーとはどのようなものでしょうか?

世界のバイヤーが買い付けにやってくる“鉱物の市場”です。アメリカのツーソン、フランスのサンマリーオーミン、ドイツのミュンヘンなどが世界的に有名なミネラルショー。他にもローカルなミネラルショーを巡ることもあり、ホテル1棟が丸ごと会場で、ひと部屋ひと部屋を巡りながら、石を買い付けるようなケースもあります。

鉱物は世界に約5000種あり、現在も新種が見つかっているんです。ミネラルショーを訪れるたびに発見があり、見たこともない鉱物に出会えるのが最大の魅力です。例え同じ名前の鉱物であっても、その結晶は成長環境によって大きく姿を変えます。ひとつとして同じものはない。これも鉱物の面白さです。

海外のミネラルショーの様子。写真はツーソンミネラルショーの会場。

――今回の展覧会にはアルプスの水晶も展示されるそうですね。

はい、貴重なコレクションを持っていくつもりです。コレクターも喜ぶような水晶を、気軽に見ていただけるいい機会になればと思っています。ちなみに水晶は、賢治のホームである岩手や日本各地でも採れる鉱物です。他にも、賢治の作品に登場するアメシストやルビー、エメラルドを始め、世界各地の鉱物も展示します。

コレクターからの評価も高いアルプスの水晶。

鉱物の魅力は、小さく美しい石の中に、地球の情景を見出せること。おそらく賢治も石を見つめながら、さまざまなイマジネーションを膨らませたのではないでしょうか。会場を訪れたみなさんにも、そんな風に鉱物と対峙してもらえたら嬉しいですね。

PROFILE

USK MINERALS (ユーエスケー ミネラルズ)
自然の芸術性に惹かれ、世界各地からトップクラスの鉱物標本やファインジュエリー用の原石をセレクト。鉱物の美しさを伝えるべく、2015年からは東京国際ミネラルフェアのディレクターとして企画・運営にも携わる。http://uskminerals.com/

edit PAPERSKY
text Yuka Uchida
Photography: Patrick Reith (@mineralien_surselva) , Anton Watzl Sen
Photography. , Kiyoshi Kiikuni Photography. , Machiko Fukuda(exhibition space)