2023.3.15
Maison Kitsuné × and wander
collaboration interviewand wander journal #59
2023年春夏、〈and wander〉は〈Maison Kitsuné〉とのコラボレーション・コレクションを発表した。いったいどのような背景と精神のもとに誕生したコレクションなのか、〈Maison Kitsuné〉のジルダ・ロアエック氏と黒木理也氏、〈and wander〉デザイナーの森美穂子にきいた。
ジルダ・ロアエック氏と黒木理也氏により2002年にパリで設立した〈Maison Kitsuné〉。「ファッション、音楽、コーヒーショップを融合させたユニークで刺激的な“Art de Vivre(暮らしの芸術)”を提供する、多面的なクリエイティブブランドである」。こう二人が語るように、音楽やアートなどの分野にも精通した彼らの活動は、ファッションの枠を超えて、パリのライフスタイルや文化を伝えてきた。
今回発表されたワードローブには、撥水性や通気性、吸湿性のあるテクニカル素材が用いられ、都市から大自然へと飛び出したくなるようなアイテムが並ぶ。さらにバックパックにも、耐摩耗性と耐水性に優れた素材が使用されるなど、アウトドアでの実用性も高い。
〈Maison Kitsuné〉と〈and wander〉、異色のコラボレーションのように思えるが、これらが生まれた背景とは――?

―コラボレーションの可能性が浮上した際、どのような感想をもちましたか?
森:私たちは自然に触れるきっかけになりたいと常に思っていますので、ファッションマーケットで認知度の高い〈Maison Kitsuné〉とコラボレーションすることで、新しい人たちに自然へとナビゲートできる機会が作れると思いました。また、実はジルダとは20年以上も前に知り合っています。ブランドの拡大を消費者として見ていましたし、ジルダファミリーがハイキングやスキーなどアウトドアアクティビティを楽しんでいるのは知っていたので、今回このような取り組みができてとても嬉しいです。
Maison Kitsuné (以下MK):〈and wander〉は、アウトドアライフスタイルのための技術的なディテールをマスターしながら、確かなクリエイティブ・ビジョンを取り入れるという、非常に優れたセンスをもっています。これが、今回のコラボレーションが実現した理由のひとつだと思います。
―〈Maison Kitsuné〉は都市生活者のためのブランドという印象が強いですが、お二人にとって、自然・アウトドアはどのような存在ですか?
MK:ブランドカルチャーの一環として、私たちは都市の探索に根ざしてきた長い歴史があります。ただ最近のシーズンでは、メゾンはアウトドアの表現もとり入れ、〈Maison Kitsuné Camp〉というシリーズ名で、山でのアクティビティのために作られた商品を展開しています。今回のコラボレーションでは、機能性と実用性を重視し、山と都市の融合を表現しています。
―制作のプロセスにおいて、2つのブランドのコラボレーションにより実現したかったこと、また実現したことはなんですか?
MK:このコラボレーションは、両ブランドのコミュニティを新しい道へと導き、自然とつながり、アウトドアの素晴らしさをさらに探求するための新しい方法を見つけることを目的としています。
私たちにとっては、〈and wander〉がもつテクニカルファブリックと製造の専門知識を生かして、大自然や山で着用できるコレクションをつくることが非常に重要でした。
森:〈Maison Kitsuné〉のベーシックで気の利いたスタイルと軽やかでウィットの効いたグラフィックを用いながら、〈and wander〉のハイキングウェアとしての裏付けあるものづくりを心がけました。
色やデザインなどは、ともにアイデアを出しながら完成させたので、双方のテイストがいいハーモニーで表現されていると思います。そのうえで、ハイキング用のウェアの素材、仕様、運動量などの機能性は担保してつくっています。
MK:大自然から都会的なライフスタイルまで着こなすことができるものになりましたね。



―自然に誘われるようなグラフィックが素敵ですね。
MK:グラフィック・ランドスケープは、大自然からインスピレーションを受け、境界のない世界を発見することをイメージしました。終わりのない道は、デビッド・ホックニーとジョージア・オキーフの絵画からインスピレーションを得たもので、自然や果てしない風景の美しさと再びつながる必要性に注目しています。
―両者のロゴを組み合わせたコラボロゴも、新鮮でユニークに感じます。
MK:今回のコレクションロゴは、両ブランドのロゴをわかりやすく目に見えるかたちで使用し、そのうえで新しいロゴを作るというアイデアによるもの。まさに共創のプロセスです。両ブランドのコードをミックスし、カラーブロックを注入し、物事がどのように進化していくか、両チームはクリエーション・プロセスをとても楽しんだのです。
森:〈Maison Kitsuné〉にとってのアイコニックなキツネと〈and wander〉のトライアングルマークが見事にマッチして驚きました。つづく2023AWでは、さらに進化したコラボロゴもあります。楽しみにしてください。

―とくに気に入っているアイテム、その理由を教えてください。
森:ハイキングジャケットです。爽やかなカラーブロックのジャケットは、素材、パターン、仕様など、ハイキングウェアとしての機能を担保しています。白いボトムスなんかを合わせて街で着たくなるジャケットです。軽量でシワになりにくいし、撥水もあり、これからの季節、クーラー対策として鞄に入れておきたいです。
MK:私たちも機能的なハイキングジャケットと、撥水加工を施したナイロンを使用したハイキングパンツがお気に入りです。スポーティなシルエットとテクニカルなデザインは、都会の日常生活にも、アウトドアにもぴったりです。
―今回のコレクションをどういった思いで制作しましたか?
MK:このプロジェクトでは、機能性とテクニカルな素材を、ファッション性と多彩なシルエットに結びつけました。
ランドスケープや国立公園など、大自然の中に身を置くという発想がインスピレーションになっているからです。それは、〈Maison Kitsuné〉と〈and wander〉のブランドアイデンティティを保ちながら、制作されたアイテムや色、ディテールに反映されています。ホックニーの世界へ旅するようなイメージです。
森:アクティブな気分になれるコレクションができました。アウトドア遊びのきっかけになりたいです。〈Maison Kitsuné〉とのハイキングクラブも予定しているので、ぜひウェア着用でご参加ください。
text Sayoka Hayashi(euphoria FACTORY)
photography Saori Tao
translation Masumi Tokugawa