2019.09.19

感性を満たすアウトドア
ウェア作り(前編)and wander journal #02

「ファッションの感性をアウトドアに持ち込む」
そんなかけ声とともに立ち上げられたアンドワンダーは、
2011年の東京で産声を上げたアウトドアブランドだ。

text Taro Muraishi

photography Keita Noguchi

創業者のひとり池内啓太は、日本を代表するブランド「イッセイミヤケ」にてデザイナーとして活躍後、同社内で働いていた森美穂子とともにアンドワンダーを立ち上げている。

彼は、街のなかで好きな服を着ているときに感じる嬉しさ、楽しさ、気持ちよさと同じ感覚を山のなかでも感じてもらいたかったと語る。

「アンドワンダーは、登山をはじめとしたアウトドアアクティビティで機能することが大前提。そのうえで自分はファッションの世界の出身ですし、洋服も大好きだった。だから、僕たちの服を山で着ることで気分が高揚したり、時代を捉えた格好よさを人々に感じてもらいたいんです。このふたつの要素をアウトドアウェアで両立すること。それがアンドワンダーのひとつの大きな仕事なんだと思うんです」

もともとは旅行好きだったという池内は、ファッションデザイナーの仕事をしながら南欧や中米、アジア諸国などを歩きまわるうちにアウトドアスポーツに興味をもちはじめた。いっぽうの森は、両親に連れられて登山やアルペンスキーをして休日を過ごすことが多かったと自身の幼少期を思い出す。

仕事仲間だったふたりは、次第に仲間たちとキャンプへと出掛けるようになった。だが、市販のアウトドアウェアには違和感も抱いていた。

「キャンプに行っても、食事を作ったり食べたりするだけで時間をもてあましていたんです。それで、キャンプ場から続くハイキングレイルを歩いてみて、徐々に登山にも興味をもち始めていったんです。アウトドアの道具もたくさん集めてましたね。でも、アウトドアウェアで欲しいものが見つけられなかった。だったら、自分たちで作ったら、いいものが出来るんじゃないかなと思ったのがアンドワンダーの始まりです」

池内の隣で会話に頷いていた森が、話題に加わる。

「もちろん市販されていたアウトドアウェアは、保温性や防水透湿性といった機能、登山での動きやすさといったスペックは充分でした。でも、洋服としてのシルエットやカラーリングといった要素で、私たちの感性を刺激してくれるアウトドアウェアが欲しかったんです」

森は、特別な登山技術がなくても楽しめるアウトドアや登山に合うウェア作りをしているとも話す。それは、東京で仕事をしながら、週末や夏休みに少し長い休暇を取りながら、電車や飛行機に乗って出掛けられる山だという。

「エベレスト登山のようにすごい時間と費用がかかるわけでもなく、天性の才能が必要なエクストリームな世界の話でもない。最初からは登れないかもしれないけれども、ちょっと頑張れば誰でも手が届くところにある山や自然。私はそんなアウトドアが好きで、遊んでいます。例えば、今年の1月はテキサス州のビックベンド国立公園に行ったり、2~3月には北海道や八甲田でスキーをして、ついこのあいだは南アルプスの仙丈ヶ岳を登って、来月は北アルプスの針の木岳を歩く、といったように。アンドワンダーの製品も、そんな自分たちがほどよいと感じるフィールドで遊ぶことを前提に作っています」

“日本の山”がベースになっていると付け加えるのは、池内だ。

「僕たちが日常的に遊んでいるエリアですからね。無雪期ならば標高3000mくらいまでの山岳エリアで快適さを感じること。同時に、雨が多くて湿潤な島国という環境では、不快なムレ感を解消する機能も大切だと考えています。だから、軽量なレインジャケットにも、重くなるとしても脇の下に換気を促すためのベンチレーションジッパーをつけているんです。さらに蒸れないように、背中にもベンチレーションを備えた製品もあります。僕たちは軽いほうがいいからという理由で、ベンチレーションジッパーをなくてしまうという選択はしないんですよね。この感覚は、湿度が高くて蒸れたときのツラさを感じやすい日本の山を普段登っているからだと思います。快適に歩きたいという気持ちが大きくて、この快適さを山を登る人にも共有してもらいたい。それに山で感じる快適さを、日常生活でも感じてもらうために街中でも着てもらいたいですね」

彼は、山中で着るための機能性アウトドアウェアと、洋服がもつファションとしての側面の両立を目指しているとつけ加える。森は、これまでアウトドアとは無縁の生活をしてきた人たちがアンドワンダー製品に触れることで、アウトドアアクティビティに興味を抱くきかっけになればと微笑んだ。

「アンドワンダーを手に取ってもらって、どんなブランドなんだろうって思っていたら、『あぁ、山とか、自然のなかで遊ぶことを想定している服なんだ』と知ってもらえたら嬉しいですよね。山にはこんな遊びがあるんだとか、自然のなかで遊ぶとこんなに気持ちがいいんだとか。それで一度でも山に行ってみようかなと思ってもらう。そのきかっけになる役割は、今後ももち続けたいです」

アンドワンダーにおける特徴的なデザイン要素としては、光を反射するリフレクタープリントやリフレクターステッチ糸があげられる。これは、山中ではもちろん、街中で自転車などに乗っているときの視認性を高めるためにファーストシーズンから取り入れられている機能だ。当初はロゴマークなどに採用していたが、いつしかリフレクタープリントはブランドの個性となっていった。また、これまでシーズンごとにオリジナルの迷彩柄やグラデーションデザインなどを展開してきたが、2019年の秋冬シーズンにはリフレクター機能を進化させたスプラッタープリントを採用する。

アンドワンダーを特徴づける製品へのこだわりや真髄についての話題は、このあともまだまだ続いた。

次回は、ふたりが考えるデザインフィロソフィについて詳しく紹介していこう。